大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(行コ)54号 判決

井出商店は、飲食店の経営等を目的とする資本の総額一、二〇〇万円の控訴人の個人会社ともいうべき小企業で、控訴人がその代表取締役であつたこと、控訴人は、昭和二八年一〇月三一日豊島区巣鴨二丁目九番三宅地四三坪四合四勺(A地)を買受け、その地上に木造瓦葺二階建店舗一棟延床面積四九坪八合七勺を所有し、これを井出商店に賃貸し、井出商店は右店舗で飲食店を経営していたが、A地について区画整理がされることとなり、井出商店の営業に適しなくなつたので、控訴人は、昭和三七年二月一日同区巣鴨二丁目一〇番地三宅地五四坪五合七勺(B地)を買受け、同年一〇月頃その地上に木造瓦葺二階建店舗一棟延床面積七二坪八勺を建築所有し、これを井出商店に賃貸するとともに、前記A地上の建物に関する井出商店との賃貸借契約を解除し、右建物を取毀して更地とした上、A地を昭和三八年九月六日訴外東伸産業株式会社に代金一七〇〇万円で売却したこと、井出商店は、控訴人から賃借したB地上の建物で飲食店を経営していたこと、しかるに、控訴人は、公認会計士の指示に従い、同年一二月三一日井出商店との間において、(一)B地を代金二一〇〇万円で井出商店に譲渡し、(二)B地を控訴人所有にかかるB地上の建物の敷地として井出商店より賃借し、(三)右借地の権利金として一七〇〇万円、地代として年額五万円を井出商店に支払う旨の契約を、一通の書面(甲第八号証)に第一条ないし第三条として記載して締結したこと、井出商店の昭和三九年六月三〇日現在の貸借対照表には、固定資産としてB地を四〇〇万円と評価し、記載していることを認めることができる。

右認定の事実によれば、前記(一)ないし(三)の契約は同時に一体としてなされたものであり、控訴人は、自己の建物所有のため、所有権に基づくB地の利用に引続き、賃借権に基づくB地の利用を継続し、その利用関係になんらの中断もなく、また、井出商店は、B地の所有権を取得すると同時に、控訴人に対し、井出商店が賃借中の建物所有を継続せしめるため、B地に賃借権を設定し、自己においてB地を更地として利用し得る時間は寸秒もなかつたのであるから、税法上の観点からは、むしろ控訴人は賃借権の負担つきのB地(底地)を二一〇〇万円と一七〇〇万円との差額四〇〇万円で井出商店に売渡し、井出商店は賃借権の負担つきのB地を右四〇〇万円で控訴人から買受けたものと認めるのを相当とする。以上のような認定は、健全な取引の常識にも合致するところであり、恣意的、便宜的な解釈であるということはできない。所有の土地の売渡しに際し留保された敷地利用権が賃借権であるとすれば、土地所有権者が自己の所有地に賃借権を有することになつて不合理であるというように考えることは、前記売買契約と賃貸借契約の同時性、一体性を看過するもので、不当であり、本件取引の実体にそぐわないものといえよう。

(浅賀 川添 秋元)

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